おたくのひとりごと

舞台俳優、ワンピが好きなバンギャのゆるいブログです。

ハダカ座公演vol.1「ストリップ学園」(ネタバレなし)

普段こういうがっつり公演の話はブログに書かないのですが、今回ばかりは書きたくなったので書かせて頂きます。ネタバレはしませんので気になっている人は是非参考にしていただければ。

www.clie.asia

 

宝ジェンヌを夢見て宝塚音楽学校に入学するようにストリップで天下取る夢を抱いた少女達の集う場所、ストリップ学園。
それぞれの想いと夢を抱きながら伝説のストリッパーの称号「アゲハ」を目指すべく奮闘する少女たちの物語。
ストリッパーを目指す少女たち、登場する女性たちはすべて男性キャスト。女装で少し妖艶な雰囲気、と言うとマグなんとかかんとかを思い出すが、それとはまた全然違う。
上演時間は2時間ほどだが、あっという間に過ぎてしまう、ジェットコースターのような、一種の絶叫系マシーンのような作品。
会場は新宿FACE。本来のFACEの正しいステージの使い方、というかFACEでプロレスをするときのような客席配置。中央にステージがあって、それを四方から囲むように配置されている。ステージも回るのでどこが正面とかもあまりないのかもしれない。キャストも四方八方から登場し、会場内を歩き回り走り回るのでどの位置にいても「見えにくい」ことはなく楽しめると思う。

 

キャスト

メインの少女たち4名は若手俳優たちが演じる。

・星野ラン/古谷大和
幼い頃に観たストリッパーが忘れられなくて田舎から走って都会に飛び出てきた少女。
もともと綺麗な顔立ちの古谷くんだけど、女装もばっちり似合っている。
この美貌で天真爛漫ドジっ子属性とかチートすぎる。
その長い手足を使って魅せるストリップは思わず息を飲んでしまう。

・一條葉子/石田隼
ストリッパーの母を持つ、生まれ持っての踊り子。
とにかくとても華奢なので抜群に女性衣装が似合っていて本当に女の子みたい。
でも一番ナチュラルで素朴な雰囲気で親しみやすい。
私は葉子に一番感情移入してしまったかもしれない。
あと石田くんの細かい小ネタのような芝居がめちゃくちゃツボすぎてめっちゃ笑う。

・橘朋美/芹沢尚哉
貧乏故にお金を稼ぎたくてストリッパーを目指す少女。巨乳。
すごく明るくて元気いっぱいなあどけない女の子だが時折とんでもない色気を見せる。
パジャマ姿とかもう女子にしか見えない。
色々詰め込んでいるとはわかっているのに巨乳が違和感ないのはどういうことなんだ。

 ・岩清水姫華/藤原祐
何不自由ないお嬢様育ちだが何故かストリッパーを目指す少女。
ひとつひとつの仕草に気品が溢れていて流石お嬢様、という感じだがそれだけではない魅力がある。
めっちゃ色白なのですごく綺麗。

 

そして若手俳優ではないがもう一人。

 ・御手洗いちご/ロッキン=ヨーコ
今回舞台初出演とは思えない台詞量と運動量を見事にこなしていて本当に初舞台?と何度も思った。
多分、このキャラクターに感情移入してしまったり胸を締め付けられる女性客は多いんだろうなと思った。

 

少女達をとりまく周りのキャラクターも非常に個性が強い。
小林顕作さんや千代田信一さん、藤田記子さんたちの安定感が半端じゃない。この人たちが登場したら「次はどんなことで笑わせられるんだろう」みたいなわくわく感がある。

 

物語

同じような女装舞台であるマグなんとかかんとかと比べると、一番違うのは「女性役の演じ方」だと思う。リアルな女性らしい女性を演じているわけではなく、ところどころ男らしさをわざと残してコミカルに演じている。
でもそのおかげで色んな生々しい要素すらギャグ化されるというか大胆なデフォルメとなり、受け入れやすくなっていると思う。
一方で男らしさが残っているはずなのにここぞというときは全員女性にしか見えない。なんだこれ。不思議な感覚。
また、少女たちの抱えている闇や苦しみも、エピソードだけ聞けばものすごくつらい話。特に女性なら更にそのつらさが増すと思う。ただひたすらにつらく悲しいシーンとならないようにパワフルに、コミカルに演じていてあくまでも「観客を楽しませる」作品として作られているように感じた。

ちなみに小中学生並の意味分かんないくだらないギャグとか好きな方は絶対好きです(褒めてる)。私はくだらないネタ大好きなのでめちゃくちゃ笑いました。
ストリップと聞くと「下ネタが多そう」とか「エロい」と思いがちだと思う。
もちろん、そういうセクシーな要素もあるが、少女たちの背負うドラマに惹き付けられてしまう。
先にも述べたが少女たちやストリッパーが抱える重たく苦しいそれぞれの想いが描かれている。
女性ならばきっと思うことがあるのではないだろうかと思う。
私なんかは深読みクソ野郎なのであらゆる場面で深読みしてはめちゃくちゃに泣いた。

 

演劇かショーか

歌が結構多いのだが、その歌詞をよく聴いてみるとめちゃくちゃ意味不明なフレーズを歌ってたりして思わず笑ってしまう。
そしてその曲や様々なもののセンスが80年代の香りがして私はめちゃくちゃ好きでした。諸々と若い子には通じたんだろうか(震え)
そしてなにより、これは「観客参加型」の作品である。
公演中に気分が高まったらいつでも声を発してOK。決まったタイミングに紙テープを投げる(投げる際は立ち上がってもOK)。好きなキャストにチップを渡す。
これがあってようやく作品が完成する気がする。
声を出していいとか立ち上がっていいとか、普通の舞台なら絶対に禁止されることだがこの舞台ではOK。むしろ声を出せば出すほど演者側も喜ぶ。
この感覚はバンギャの私としては「舞台を観る」というより「ライブを観る」という感覚の方に似ていた。
少女たちのドラマも沢山あり、確実に演劇ではあるのだが、その時入っている客の反応や盛り上がりによって作品の感じ方も変わってくる。
客の反応で変わるのは普通の舞台でもあることだが、この作品はそれがより顕著だし客の反応によって演者もショーの見せ方を少しずつ変えている。
特に中村中さんによる伝説のストリッパーのストリップシーンはものすごくアーティスト性を感じた。
その迫力ある、でもどこか儚くて切ない歌声と美しいストリップには思わず涙が溢れてしまう。
中村さんだけでなく他のキャストのストリップも、ほとんどストリップに触れたことがないであろう観客に向けて「ストリップ」というひとつのエンターテイメントをじっくり大切に噛み砕いて見せてくれるような、そんな風に感じた。それぞれの役の想いを乗せて。

 

作品のはじまり

「非常識な舞台」が最初からテーマとされていた。「非常識な舞台」だから公演中声を自由に出していいし飲み物を飲みながら観てもOK。そして観客が下着(ハンカチ等でも可)を振り回す。私はパンツを振り回す現場に慣れていたので(どんな現場だ)(本命盤のライブです)すんなり受け入れたが常人なら戸惑うと思う。でもパンツ振り回すのめちゃくちゃ楽しいよ!
何故こんな非常識な作品をやろうとしたのか。プロデューサーがパンフ等で語っていた。
昨今、舞台に「常識」を必要以上に求めることが増えた。特にSNSでこれはマナー違反だとかこれは非常識だとか、ごく一部を取り上げて議論されている事が多い。だからこそ「最初から非常識な舞台」を作りたかった。常識かどうかを議論しなくても最初から非常識に、演者も観客も難しいことは考えないで頭を空っぽにして全員一体となって楽しめる作品を作りたいと思った。だから今までどこにもないような非常識な舞台を作った。
ニュアンスだけどこの話を聞いて私はふと、このはてブロを思い浮かべた。はてブロでもよくマナーに関する話はしょっちゅう取り上げられる。私も何度かした気がする。だから、是非はてブロ民のみなさんには一度観て欲しいと思ってこの記事を書いた。
私自身だいぶ頭が堅い人間なので「非常識」はものすごく嫌いだ。だからこそ、この舞台のすべてを「すべてがすごくよかった!」と一言で言える訳ではなかったが、色々と考えさせられた。そしてとても珍しい体験をしたと思った。大嫌いなはずの「非常識」なのに、観終わったあとは満足感と「楽しかった」という感情があった。こんな経験は恐らく他の舞台ではできない。
この作品をどう感じるかは人それぞれだと思うが、一度観てみて欲しい。少しでも多くの人に観て欲しいと、純粋にそう思った。
そして、そんなプロデューサーが公演中に汗をかきながらステージ脇で裏方の仕事をしている背中を見て、その想いが強まった。

 


とにかく私は沢山笑って、沢山泣いた。
作品自体、急に始まって怒濤のように話が繰り広げられてあっという間に終わってしまうジェットコースターのようなものだったが、私の情緒もジェットコースターだった。
最初はもっとネタ的な、がっつりコメディ系なのかと思っていたがまさかこんなに泣くとは思わなかったし「非常識」が嫌いな私がこんなに楽しめるとは思わなかった。
キャストもスタッフも全員が、とにかく全力で自分の持っている力を全て振り絞るように「非常識」を作り上げている。その姿は女装姿でも非常にかっこいいと思った。
普段しっかり物語を楽しむ舞台や2.5次元舞台を観ている人ほど、観て欲しい。他じゃ絶対に味わえない経験がある。どう思うかはわからないけど、それを経験しないのはきっと損だと思う。

既にDVD化と映像配信が決定しているが、会場の四方八方から登場しては会場いっぱいを駆け回るこの作品。どのように映像化されるかはわからないが確実に劇場で観た方が何倍も楽しめると思う。

そして何より、「作品を演者たちと共に作る一員」となる楽しさ、快感は劇場でしか味わえない。
公演は1/20(土)まで新宿FACEにて行われている。当日券も用意されている。また、既にこの公演のチケットを所持している人に受け付けで紹介して貰うと当日券が1000円安くなるというシステムがあるので周りにチケットを持ってる人がいたらお願いしてみるのもいいかもしれない。
是非物販で紙テープ(200円)とチップ(300円)を買って、おうちから未使用のパンツを持って行くとより楽しめるだろう。

常識人が多いであろう、はてブロ民のみなさま、一度究極の「非常識」な舞台を覗いてみてください。何か感じるものがあるかもしれません。

 

引き続き何かあればお気軽にどうぞ。既に頂いてる質問絶賛下書き中です。遅くなってすみません。

9さんのお題箱